子ども達に必要なことそれは「生きる力」
成功も失敗も
判断は自分のもの
平成が終わり令和となりました! 私が子どもとアートに関わる仕事を始めたのはまさに平成が始まる頃。あっという間の30年です。さて、そんな変遷の中で、最近気になる子ども達の口癖があります。それはすぐに「失敗した」、やる前から「できない」と言う事。4歳でも言うのが私には不思議でしかたありません。最初から上手に出来るわけがないのになぜでしょう? これは実はアトリエだけではなく他のジャンルの先生達も口を揃えて言う最近の特徴です。
アトリエでは、毎週課題が変わります。絵などの平面作品と 工作などの立体作品づくりを 交互にやります。絵も空想画、デッサン、デザインなど様々な技法や画法に取り組み、 工作も木工、金属、革、布等、本格的な道具もたくさん使うので初めての事がいっぱいです。やったこともない事が初めから上手くできる人はいません。30年前までは、新しい課題を持っていくと、皆目を輝かせて「今日はなにやるの!」と好奇心の塊でした。ところが、最近はとにかく最初から上手にできないことをとても嫌うのです。これはもう、子ども達一人一人の問題ではなく、今、日本の社会全体が「失敗をゆるさない」そして、それが息苦しさと生き辛さを生んでいるのではないかと思うのです。
失敗を叱らない、
チャレンジしたことを認める
アトリエの中で 「失敗したから 新しい紙をください」と言っても新しい紙は渡しません。それは失敗ではないからです。「それは失敗ではないよ、自分が気に入らないだけだよ」と言います。すると子どもはびっくりした顔をします。「どこが気に入らなかったの?」と聞きます。するとホッと肩の力を抜いて「小さくなりすぎた」とか「形が違う」と言います。そこで「どうしたいの?」と聞きます。そして方法を教えていきます。これが表現したいものを形にする技術の習得です。そして、出来上がった作品に子ども達はニッコリと満足そうに微笑みます。これを繰り返していくと子どもたちは「失敗する」「うまくできないこと」を恐れなくなります。もちろん思う様に出来なくて悔し涙を流す子もいます。でもアトリエで悔し涙は 「見込みがある!」と褒められます。
今、子ども達の周りには最初から綺麗で、簡単に上手にできるモノしか身の回りになく、安心安全はもちろん大切かもしれませんが、それさえも本来ならば 与えられるものではなく自らの判断によって得るものでした。人間は成長する中で、何度も繰り返し練習をして様々なことを習得していきます。生まれていきなり歩ける子どもはいません。生まれてすぐに会話ができる子どももいません。それなのになぜ 4歳から「できないこと」を嫌がり「失敗すること」を恐れるのでしょう? 私は子ども達に言います「失敗というのはできる人が、たまにできなかった時に使う言葉。やったこともない事ができない時は失敗とは言わない」「チャレンジした人だけが失敗ができる」「どんどん失敗しなさい 紙ならここにいくらでもある。もっとチャレンジしなさい。あなたたちのやりたいことができるようになるため、 そのために私達がいるんだから!」と。
こんな声かけを繰り返していると子ども達の目の奥がキラリと光ります。そして顔をあげます。背筋がスッと伸びます。魂の奥底の「生きる」スイッチが入る瞬間です。表現することを身につけた子ども達は とても強いのです。彼らは本来はとても強い生き物です。人生は大人になっても 失敗の連続。失敗をしないように生きなさいと教えるのではなく、失敗した時にどうやって立ち上がるか。その体験と方法を子ども時代に身につける事これが今「生きる力」に大切なことなのだと思います。
【ながわ けいこ】
長久手市岩作でアートスクール「アトリエフラワーチャイルド」を運営。自らの子育て経験や、教室の子どもたちとのふれあいの中で見つけたものごとをFacebookやブログでも語っています。
●ブログ ☆アトリエ フラワーチャイルド☆造型絵画教室 http://ameblo.jp/atelierflowerchild/
●HP http://www.atelierflowerchild.com/